ガイドブック文化・芸術

活気あふれる文化と芸術

活気あふれる文化と芸術
オーストラリア国立博物館(キャンベラ)
オーストラリアでは、アボリジナル・アートなどの数万年におよぶ伝統的な文化・芸術と、様々な民族的背景をもつ移民によってもたらされた多様な文化や芸術が共存しています。

芸術・文化活動の多くが政府資金でまかなわれているため、多くのサービスが無料で提供されており、人々が気軽に文化・芸術活動を親しむことができる環境が整っています。国内には、国立のバレエ団やオペラ団があり、すべての州に主要な美術館や交響楽団、図書館などがあります。

美術館や博物館では、国際レベルの展覧会なども数多く開催されており、クイーンズランド州の州立美術館で3年毎に開催される「アジア太平洋現代美術トリエンナーレ」は、日本をはじめアジア太平洋各国から多数のアーティストが参加する国際展覧会として有名です。

近年、オーストラリアは、ニュー・メディアやバイオ・アート、コンテンポラリー・ダンスやデザインなどの先駆的な現代美術・文化を発信する国として、世界中で高い評価を受けるようになりました。政府支援の充実は、文化・芸術活動に携わる人々にとっても好ましい環境を生み出しており、日本を含めた海外からも多くのアーティストがオーストラリアを拠点として国際的に活躍しています。

映画・演劇

映画・演劇
BLINKY BILL THE MOVIE
映画・演劇
ANIMAL KINGDOM
映画・演劇
LAST CAB TO DARWIN
1906年という世界でも最も早い時期に長編映画が製作され、その後、今日までオーストラリアは多くの優れた映画を世界に送り出してきました。
現在、オーストラリアには5つの大きな映画撮影所があり、世界中の映画の撮影が行われています。デジタル・視覚効果やアニメーション制作を専門に請け負う映画制作会社などもあり、『ハリー・ポッター』シリーズなどが手がけられました。国内では、『素足の1500マイル』や『サムソンとデライラ』など先住民を題材としたものや社会派のオーストラリア映画が多く製作されています。
ケイト・ブランシェット、ヒュー・ジャックマン、ニコール・キッドマン、ヒューゴ・ウィービング、ジェフリー・ラッシュ、ナオミ・ワッツといった俳優陣や、バズ・ラーマン(『ダンシング・ヒーロー』)、ジョージ・ミラー(『マッド・マックス』)やピーター・ウィアー(『刑事ジョン・ブック/目撃者』)などの監督は世界で活躍しています。

音楽

音楽
クラシックから現代音楽、キッズのエンターテイメントにいたるまで、幅広いジャンルにわたり、オーストラリアのミュージック・シーンは活気に満ち溢れています。
音楽
オーケストラの演奏(ブリスベン)
世界的成功を収めたオーストラリアのミュージシャンには、AC/DC、ゴティエ、ニック・ケイヴ、INXS、カイリー・ミノーグ、キース・アーバン、ジェフリー・グルムル・ユヌピングなどが挙げられます。またフジロックや東京ジャズにもオーストラリアのミュージシャンが定期的に招聘されています。クラシック分野では、国際的にも高い評価を受けているオーストラリア室内管弦楽団やメルボルン交響楽団などがあり、定期公演を行っている他、各地で上映されるオペラも幅広い層の人々に支持されています。
音楽
バーニー・マコール(ジャズ ピアニスト)
ジャズ
オーストラリアにジャズが到来したのは1920年代のことですが、その後すべての州の大学にジャズ研究コースが開設されたこともあり、1980代から90年代にかけて、コンテンポラリー・ジャズが独特の音楽性を確立していきました。日本でも、2006年日豪交流年に、東京ジャズフェスティバルにオーストラリアのジャズミュージシャンが出演してから、継続的にオーストラリアのジャズミュージシャンが来日を果たすようになりました。その後、特に東日本大震災を機に、オーストラリアのアーティストによる岩手県の学校訪問や、岩手ジャズフェスティバルへの出演へと発展しています。

アボリジニの芸術

アボリジニの芸術
オーストラリアの芸術文化やそのスタイルが多様になる一方で、近年、国内外でアボリジニの芸術に対する評価が高まっています。本来、アボリジニ・アートは、鑑賞するために作られたものではなく、祖先からの口頭伝承(storytelling)の手段の一つでした。霊的・文化的知識や信念を受け継ぐために用いられてきました。そのため、アボリジニの文化において、芸術表現は非常に重要で、音楽、ダンス、絵画など豊かな表現手段が用いられています。

アボリジニの音楽の伝統は何千年も前にさかのぼります。アボリジニは、遠い昔から、自然界に存在する素材を駆使して音色を作り出してきました。特にオーストラリア北部では、長い間、最古の木管楽器とされるディジュリドゥと呼ばれる独特の楽器が儀式などで演奏されてきました。ディジュリドゥは伝統的に、シロアリに幹の中を食い尽くされて空洞になったユーカリの木を磨いて作られます。すべて手作りのため1本、1本、形や長さ、響く音が異なるのが特徴です。この楽器を演奏するためには、口から息を吹き出すと同時に鼻で空気を吸込む循環呼吸と呼ばれるテクニックをマスターしなければならないため、一人前に演奏できるようになるまでには何年もかかります。一部では、その身体に響く低い音色に、ヒーリング効果があると信じられ、病気治療のひとつとしても活用されていたと伝えられています。
アボリジニの芸術
アボリジニの伝統的な絵画的表現は、それぞれの所属集団により異なり、その際に用いられる様式や素材、技法も多様です。ある型を洞窟の岩壁などに向け、その上から口に含んだ染料を吹きつけそのモチーフを描き出すステンシルと呼ばれる型抜き染めや、「ドット・ペインティング」として知られる点の集合を用いた点描画法、その他カンガルーなど動物の生体構造をまるで透視したかのように描く透視画の技法も知られています。

アボリジニは様々なものをテーマに絵を描いてきました。例えば、架空の生き物や人間、鳥、魚、爬虫類、動物の足跡、抽象的なデザインなどがそうです。これらテーマの多くがいわゆる「ドリームタイム」と呼ばれるアボリジニの天地創造の神話に関連するものであり、本来文字文化を持たなかった彼らは、このような表現方法を通して、長い間祖先から受け継いできた生活の知恵や教えを代々子孫に伝授してきました。抽象的なデザインには、食べ物や水のある場所などを示す暗号化された情報が含まれており、自然の中で生きる知恵や独特の世界観が表現されています。
アボリジニの芸術
伝統的なアボリジニの造形物は、色や特別な効果を得るために、自然界に存在する素材を活用し創作されます。国内西部の砂漠地帯では、儀式のために、黄土や粘土質の土、灰、また草木の繊維などを使って砂の上に造形物が創作されてきましたが、それらは儀式が済むと元に戻されました。1970年代から、いわゆる伝統的なものだけでなく、西洋絵画の方式を取り入れ、キャンバスなどの支持体にアクリル絵の具などを使用する画家もあらわれました。彼らの用いる手法が、偶然にも当時のアメリカの最先端の抽象芸術と共通していたことから世界中で評価が高まり、世界中で知られるようになりました。

日本でも「ユートピア−アボリジニが生んだ天才画家 エミリー・ウングワレー」展(2008年)や「ワンロード-現代アボリジニ・アートの世界」展(2016年-2017年)など、定期的にアボリジニの芸術を紹介する展覧会が開催されています。

舞台芸術

舞台芸術
NIDAの劇場と公演の様子
オーストラリアの舞台芸術は活気に満ちています。

コンテンポラリー・ダンスでは、Bangarra Dance Theatre、Sydney Dance Company、Australian Dance Theatre、Chunky Moveなどが、その身体能力、オーストラリア独自のスタイルと多様性が国際的にも高く評価されています。また政府の支援もあって、様々な規模のカンパニーが活動し海外ツアーも行っています。

更に、演劇も大変さかんです。オーストラリアの重要な舞台関係者養成機関、オーストラリア国立演劇学校(National Institute of Dramatic Art 、略称 NIDA) はケイト・ブランシェットやヒューゴ・ウィービングなど国際的なスターを始め、50年以上にわたって、訓練を積んだ才能ある俳優や演出家、デザイナー、舞台監督、道具・技術担当者を輩出してきました。

メディア・アートとバイオ・アート

メディア・アートとバイオ・アート
Victimless Leather (2004), Artist: The Tissue Culture and Art Project, Materials: Biodegradable polymer matrix, Foetal Calf Serum, Glass, Photo credit: Ionat Zurr and Oron Catts
「オーストラリアは、パトリシア・ピッチニーニ、SymbioticA、ジェフリー・ショー、ステラーク、トレイシー・モファットなど、メディア・アートやバイオ・アートの分野で、多くの一流アーティストを生んでいます。

「Victimless Leather」(2004)は、全身の構造に見たてられたフラスコやチューブやポンプのシステムの中に、ジャケットのような形の生分解性プラスティックが入り、展示が進むとそれが培養細胞に置換され、あたかも動物を殺さなくても革ジャケットが作られるようなイメージを誘発します。しかし、実際には培養に必要な培地の中には、仔牛から採取した血清が使われており、そう簡単にはことは運ばないというアイロニカルな作品です。

ビジュアル・アート

ビジュアル・アート
オーストラリア・ハウス
現代オーストラリアのビジュアル・アートは多様で、オーストラリア人アーティストは国際的な芸術祭に、数多く参加しています。日本でも恒久的に設置された日豪交流の拠点であるオーストラリア・ハウスを通じて大地の芸術祭、越後妻有トリエンナーレに参加してきました。
ビジュアル・アート
カクラ・クルクル・アット・ツマリ
オーストラリアに拠点を置くアーティスト、ダダン・クリスタントは2006年、越後妻有地域の棚田に作品を設置しました。「カクラ・クルクル」は竹で作られた風車です。ダダン・クリスタントの出身地バリ島では収穫期の前後に田んぼに設置する民芸品で、神に収穫の感謝を捧げるためのものです。
ビジュアル・アート
We Built This City, 2016, Installation view at Vine Street, Redfern, for the 20th Biennale of Sydney, Courtesy the artist
瀬戸内国際芸術祭2016には、シドニーを拠点に活動するケグ・デ・スーザが参加します。
ビジュアル・アート
Ken + Julia Yonetani (米谷健+ジュリア), The Last Supper (最後の晩餐),2014, Salt (塩),900 x 75 x 125 cm, Abbaye de Maubuisson, France
米谷健 + ジュリアなど、日本と関わりの深い在豪アーティストも、日豪だけでなく、世界で活躍をしています。

スポーツ

スポーツ
スポーツはオーストラリア人のライフスタイルに欠かせない重要な要素で、人々は年齢や社会的地位を問わず、一緒になってスポーツに参加したリ、スポーツ観戦を楽しみます。温暖な気候のおかげで、水中スポーツを含め、年間を通じて様々なスポーツを楽しむことができます。ここでは、オーストラリアで人気のあるスポーツをいくつが紹介しています。
オーストラリアン・ルール・フットボール
オーストラリアン・ルール・フットボール
オーストラリアン・ルール・フットボールは、オーストラリアの国技ともいえる、代表的な冬のスポーツのひとつです。一般的にオージー・ルールズあるいはフッティーの名で親しまれており、ビクトリア州以西で特に人気があります。競技はオーヴァルと呼ばれる楕円形の大きなグラウンドで行われ、各チーム、18名で競います。試合はクオーター(各25分×4)に分けて行われ、選手は点数を稼ぐため、ラグビー・ボールに似たボールを足で蹴って相手チームのゴールポストに入れなければなりません。激しいタックルにもかかわらず、バットはほとんど使わず、ヘルメットもまったく使用しません。
クリケット
クリケット
クリケットはオーストラリアで非常に人気があるスポーツです。もともとイギリスで始まったスポーツで、主にイギリス連邦諸国内で盛んに行われています。クリケットは夏場に、楕円形のグランドで行われています。11人からなる2つのチームが打撃側と守備側に分かれて、革のボールとバットを使用してプレーします。ボールは野球ボールよりやや大きくて重く、縫い目は1つで、バットは幅が10センチ、ボールを打つ表面が平らで、裏面が山形になっています。「テストマッチ」と呼ばれる伝統的なゲームは、通常5日かけて行われる2イニングの国内および国際試合のことを指し、テストマッチより投球数が少ない短いゲームは「ワンデイマッチ」と呼ばれ、とても人気があります。
ラグビー
オーストラリアには、ラグビー・リーグをラグビー・ユニオンという2種類のラグビーがあります。ラグビー・リーグはプロのスポーツで、各チーム13名の選手からなります。長方形のグラウンドで、長円形のボールを使い、試合は前半と後半の各40分で行われます。ラグビー・リーグはオーストラリアの他、ニュージーランド、イギリス、フランス、パプアニューギニアでも行われています。一方、ラグビー・ユニオンは日本を含む130カ国以上で盛んに行われています。各チームは15名の選手からなり、点数の取り方などが多少異なりますが、ルールの多くはラグビー・リーグと似ています。
ネットボール
ネットボール
ネットボールは、オーストラリアで一番人気がある団体スポーツのひとつです。記録によれば、ネットボールが初めてプレーされたのは英国で、19世紀末のことでした。現在、オーストラリアを含め世界中約50カ国でプレーされています。バスケットボールと少し似ていますが、ゴールポストにリングの後ろにバックボードはありません。また、バスケットボールと違って、選手はドリブルできず、ボールをパスしながら、前に進めていきます。ネットボールは伝統的に女性のスポーツですが、今では男性や少年も地域リーグでプレーしています。
写真は、ビクトリア州の地方のチーム、モデワリー・ジュニアにクリニックで指導するオーストラリアのネットボールのスター、エロイース・サウスビーハルビッシュ。
水中スポーツ
水中スポーツ
国民の大半が海辺からそう遠くなく地域に住んでいるオーストラリアでは、水中スポーツが人気のレクリエーションのひとつとなっています。人々は、水泳やサーフィン、スキューバ・ダイビング、セイリング、モーターボート、釣りなどをして水辺のスポーツを楽しみます。
ライフセービング
ライフセービング
ライフセーバー(Lifesaver)とは、ボランティアで行うビーチまたはプールの監視員のことで、ライフガード(life guard、beach inspector)はそれを職業として行う人のことを言います。海での活動をしているSurf Life Saving Australiaという団体は世界でも最も大きなボランティア団体のひとつです。1906年にシドニーのボンダイビーチで世界初のサーフライフセービングクラブが発足され、1907年に初めて組織化され、毎年年間平均1万人以上の人々の命を救ってきました。

日本では1982年に 豪日交流基金(AJF) が日本にライフセービングを紹介し、日本ライフセービング協会という組織が発足されました。

現在オーストラリアには、250以上のクラブが存在し、全国で10万人以上がメンバーとして登録していますが、ライフセーバーとして活躍するためには最低でもブロンズメダリオンという資格を取得する必要があります。

ライフセーバーの最大の目的は水難事故を未然に防ぐことです。事故防止のためにビーチでは潮流にあわせて砂上に赤黄2色の旗をたて、海水浴の安全区間を海岸利用者に知らせます。

基本的には、海岸利用者の多い9月から3月までの毎週末ライフセーバーがビーチをパトロールし、その他の日はプロのライフガードがパトロールしています。これらの監視や救助などの活動を総称して『ライフセービング』と呼びます。 ライフセーバーは、資格保持のため、各シーズン毎に、水泳、救助法、蘇生法の厳しい試験を受けなければなりません。

シーズンが終わる3月から4月にかけて競技大会が行なわれます。毎年恒例の全豪『サーフライフセービング・チャンピオンシップス』が目標イベントです。2年に1回開催される世界選手権もあります。オーストラリア人はほとんど毎年「世界チャンピオン」の栄冠を獲得し、世界に名をとどろかせています。